オールマイトの強さについて

※わたしは本誌を読んでおらず16巻までの情報を基に書いていることをご理解ください。

 

最終的にはオールマイトの強さについて考えていきたいのですが、そのためにはエンデヴァーについて考える必要があるので、そこから考えていきます。そもそも発端はエンデヴァーである。

 

No.2ヒーローであり、轟焦凍の父親でもあるエンデヴァーこと轟炎司。この名前とてもいいよね、知った時シビれた。

 

彼はNo.1ヒーローであるオールマイトに対して強い対抗意識を抱いているが、自分がオールマイトを越えることは叶わない、と己の限界を悟り、その野望を子どもに託すことにする。そうして期待を背負って生まれたのが焦凍である。(焦凍に関しては、元々エンデヴァーとは別の方向を見ているから、それが救いかなぁとかぼんやり)(ごめんね、オールマイトに力入れすぎているから、他のキャラ考察はとても甘いの、許して)

 

ここで思うのはエンデヴァーのある種の凄絶さである。

 

オールマイトはNo.1ヒーローであるのみならず、平和の象徴とも謳われている。前者が現実味を帯びているのに対し(まだ手が届く範囲ともいえる)、後者は完全に抽象的で神話のような厳かな響きを感じる。人がおいそれと近づけない何かを感じる。そして恐らく多くの人々やヒーローはそれを感じているからこそ、オールマイトが活躍する度に「さすがオールマイト」「オールマイトがいれば大丈夫」「オールマイトが勝てないのなら誰が勝てるんだ」と言う。そういった人たちは無意識のうちにオールマイトとの截然たる違いを感じ取っているようにも思われる。

 

しかしエンデヴァーは決してそんなこと言わない。それどころかオールマイトを越えようと研鑽を積んでいく。

 

つまりエンデヴァーは「神話に挑む男」とも言える。けれど、そんな彼も研鑽を積む度にオールマイトとの間にある純然たる力の差を思い知らされたという。それでも歩みを止めることなくここまでやってきた。これは並大抵の人にはできることじゃあないと思う。きっと普通の人ならどこかで疲れ、別の活路を見出すだろう。けれどエンデヴァーは立ち止まるどころか、己の息子に野望を託すまで「諦めていない」のである。

 

それがエンデヴァーに感じるある種の凄絶さである。そして多分、このように止まらない人が次代を築いていくんだろうと思う。いろんな人に「オールマイトに比べるとどうしても…」と言われようとも、どうか立ち止まらず、その遥か先にある壁を打ち砕いて欲しいと願わずにはいられない。いつもオールマイトオールマイト言っているから意外かもしれませんが、エンデヴァーも応援しています。

 

だから11巻でオールマイトがああいうことになって、「認めない」と言っていましたが、認めなくていいと思う。認めずに、神話に挑み続けて欲しい。

 

ここで余談(飛ばしても大丈夫です)
 
エンデヴァーを見ていると、「アイシールド21」(原作:稲垣理一郎、作画:村田雄介)に出てくるあのふたりを思い出す。ひとりは王城ホワイトナイツのWR、桜庭春人と神龍寺ナーガのQB、金剛雲水である。ふたりに共通しているのは「天才を追いかける凡人」であることだ。しかし桜庭はライバルである進清十郎との差を痛感しつつも追いかけることを諦めずにはいられなかったのに対し、雲水は阿含との差を痛感した上で、阿含を「活かす道」に進む。すなわち自分のことよりも阿含を優先し、阿含が思う存分力を発揮することに価値を見出した。同時に雲水はずっと進を越えようと努力する桜庭を「羨ましい」とまで言う。
 
越えることを諦めない桜庭と、越えることを諦めた雲水。
 
このふたりとエンデヴァーってすごく似ているなあ、て思った。同時に年の功なのかエンデヴァーはそこから一歩も、二歩も先に進んでいる。いわゆる「越えたい」という曖昧な願望や理想である段階から具体的にどうやったら(オールマイトを)越えられるのかという段階に進んでいる。その進み方が万人受けするかどうかは別として。
 
話を戻すと雲水も最終的には阿含と戦い倒す道を選ぶ。ここはいつ読み返しても涙出る。雲水大好きだよ。

 

余談終了

 

エンデヴァーがこれほどに努力してなおオールマイトに近づくことは叶わず、絶望さえもする。けれどオールマイトは依然として遥か先にいるのだ。

 

ここで個人的な感覚の話になるが、自分はオールマイトを見ると、「癒される自分」と同時に「なんだか分からないけれど、針の筵に座らされる自分」がいるのだ。前者は分かるのだが、後者の理由が分からず何か月かモヤモヤしていた。やっと分かった。

 

オールマイトの強さと言うのは安心するなど温かいだけではなく、視点を変えると簡単には近づけない冷たさのようなものがあるのだ。「すてき!」と思う一方で「とても怖い」とも思うのだ。あの笑顔なのにね。

 

そう、オールマイトが怖いのである。でも好きなんです。

 

つくづくオールマイトって不気味なほどに人間離れしているな…と思う。ワンフォーオールという個性のことを考えると、妥当なのかもしれないけれど、そこにオールマイト自身の理念も相まってより浮世離れした存在になったように見受けられる。

 

エンデヴァーにオールマイトを越えることを諦めなかった強さがあるように、オールマイトにもまた自身を超越し、理念や象徴そのものになろうとし続けてきた強さがあるのだとしみじみ。それがオールマイトの強さであると思われる。物理的な攻撃力もそうなんだけれど、心の強さと言うかね。「象徴が必要である」という予言の自己成就が果たされたと考えてもいいと思う。

 

予言の内容は曖昧であればあるほど、成就が難しいと言われている(そこに至るプロセスさえも曖昧になるため)が、それを成し遂げてしまったのだ。気味が悪いほどに強かで、そこがたまらないと思ってしまう。

 

すっげぇなあオールマイト。かっこいいなあオールマイト

 

そしてやっぱり考えれば考えるほど、どうやったらこんな人に育つんだ?彼のご両親は一体何者なの?もしやコウノトリが運んできた天界からの使者?頼む、オールマイトのオリジンを読ませて欲しい、正解が欲しい。

 

最後の最後で取り乱しました。あらかた書きたいことは書けたと思うので、一旦ここで筆を止めます。こんな感じで今年一年もオールマイトについて考えることをライフワークにしようと思います。

 

2018.1.6